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赤ちゃんの股関節脱臼をご存じですか?育児の中で予防することができます!

  • 2021年03月27日

乳児の股関節はまれに脱臼することがありますが、育児の中で気を付けてもらうことで予防できるので早めにとりくんでいただき、気になることがあれば専門医に診てもらいましょう。

脱臼とはなんらかの原因で関節がずれてしまうことであり、股関節の場合骨盤の臼蓋という受け皿の部分から大腿骨の骨頭という部分がずれてしまい離れてしまう状態です。

以前は先天性股関節脱臼とよばれていましたが 現在は発育性股関節脱臼と呼んでいます。発育性とは英語の Developmental を訳したものですが、実際 乳児の股関節脱臼の場合 生まれてすぐは脱臼がはっきりせず、成長とともにだんだんと完全に脱臼していくことが多いです。ある程度脱臼が完成するのが生後3~4か月頃と言われているのでこの時までに発見できるよう乳児健診などでは必ず股関節のチェックをすることになっています。股関節脱臼と診断されますと、リーメンビューゲルという装具の治療や入院して足をひっぱり脱臼をなおす牽引治療、また手術が必要になることもあります。適切な時期に治療がうまくいけば問題なくなおることも多いですが赤ちゃんが大きくなるほど治療が難しくなり合併症のリスクも高くなってきます。脱臼したままでも足を動かすこともできますし歩くこともできますから大きくなってはじめて股関節脱臼がわかることもあります。

原因は複雑ですが、股関節の骨の形や関節の柔らかさなどいくつかの原因が重なっておこるといわれています。脱臼そのものが遺伝するわけではないのですが骨の形や関節の柔らかさというのは遺伝的な要因であることが多いためこれらを受け継ぐことはあります。股関節脱臼は女性にとても多いため(女:男=9:1)母や祖母などの血のつながりがある方に股関節脱臼のかたがいらっしゃる場合、女の子のお子さんが脱臼しやすい可能性が高くなるといわれています。

股関節の骨の成長が不十分であったり関節の柔らかさが強いなど脱臼しやすい要素をもっていたり、生まれた時にすでに脱臼しかけているとそのまま完全な脱臼になってしまう危険がありますが生まれてからの赤ちゃんの過ごし方で逆によくなる可能性もあります。

基本的に大事なことは手足を動かせるようにしてあげてください。お部屋の中で過ごすときは温度を調節してあまり厚着にしないで服や布団などで手足動きを妨げないように、特に股関節を自分でまげられるようにしてあげてください。

赤ちゃんのお世話をする方がマッサージをしたり足を動かしたりすることはおすすめしません。赤ちゃんが自分で動かせる場合はそれをうながしてあげることが大切です。

股関節をまげて開くことを開排といいます。足が M字の形に開く状態です。この形が股関節が一番安定する位置ですので脱臼しかけている場合なるべくこの位置を保つことで安定しますし股関節の発育をうながすことになりますが、股関節がかたいと開くことができませんし何かに妨げられてもいい形をとることができません。

先ほどお話しした服なども妨げにならないようにしてあげてください。

またむきぐせがある場合なるべくなおしてください。むきぐせの反対側の股関節の開きが悪いことが多く、むきぐせをそのままにしておくと開きがかたいままになってしまいます。首の力がついてきますとむきぐせも自然になおってきますがそれまでに頭の形も変形してしまいますのでなおしていきましょう。むきぐせのある側の背中にタオルをいれて体ごと反対側にかたむけて自然に反対側をむくようにしていただいたり、むきぐせと反対側からなるべくあやしてもらったりしてなおしていきます。

もう一つは抱っこで開きをよくしていきます。立て抱きで足がやはりM字のように開く形で抱っこしてください。首がすわるまでは立て抱きは不安な方も多いと思いますが片手でしっかり首のところを支えていただければ大丈夫ですし抱っこする人の体に赤ちゃんを密着させてうつぶせ気味に抱っこすれば安全です。

これらのことを赤ちゃんが生まれてから早めの時期にしていただくことが股関節脱臼を予防するうえで一番大切なことです。3,4か月健診まで様子を見てくださいといわれることもありますが予防としては遅いことになります。もちろん赤ちゃんの体調などを最優先に無理のない範囲でしてください。

以上のことは日本小児整形外科学会が作成したパンフレットにもくわしく書かれていますのでぜひダウンロードしてご活用ください。

http://www.jpoa.org/wp-content/uploads/2013/07/pediatric180222.pdf

赤ちゃんのおむつ替えの時に股関節の開きがかたい感じがする、太もものしわのより方が左右差がある、血のつながりのある人で股関節脱臼の人がいるなど心配なことがあればはやめに専門の先生に診てもらいましょう。小さい赤ちゃんは超音波検査がわかりやすいので検査のできる、赤ちゃんもみてもらえる整形外科の先生に診てもらってください。乳児健診まで待つ必要はありません。早めに診てもらい予防していくことが大切だと思います。